今回は、ちょっと足を伸ばして和歌山県那智勝浦町・色川村へ。
訪れたのは、ポツンと佇む一軒家「農家民宿ジュゲム」。
山と畑に囲まれたこの場所で、まさかの \東南アジアめし/ に出会えるとは思ってもみませんでした。
(この記事は2019年11月5日に公開したものを再編集して投稿したものです)
農家民宿ジュゲムってどんなところ?
色川村は、「和歌山のチベット」とも呼ばれるほどの山深いエリア。
最寄り駅の紀伊勝浦駅からバスで約1時間、くねくねの山道を抜けた先に、「ジュゲム」はあります。
こちらは、現地の農家・寿海(じゅかい)さんご家族のご自宅に滞在しながら、畑仕事や料理などを一緒に体験できる民宿。
シンプルだけど豊かな山の暮らしを、まるごと味わえる場所です。
アクセスと注意点
- 最寄駅:JR紀伊勝浦駅
- そこからバスで約1時間(平日のみ運行)
- 道はかなり細く、カーブが連続します。車の方は運転にご注意を。
- 予約はジュゲムのHP、Instagramなどで受付中。

ゲストルームは、タイの風がそっと流れる和歌山の一室でした。
宿泊用のゲストルームは、本宅から少し離れた離れの建物。
ここが宿泊者専用のスペースになっていて、洗面台や休憩スペース(※喫煙もOK)が備わっています。
階段を上がった先がゲストルーム。
引き戸には、8年間タイで暮らしていたという画家の奥さまが描いた蓮の絵が、古民家とマッチしてオシャレです。
階段を上がると、棚に本や熊野古道のパンフレットなどがずらり。
その中に見つけたのは、**ラーマ9世(プーミポン・アドゥンヤデート前国王)**のお写真でした。
タイ国民から深く敬愛されていたラーマ9世。
思わぬ場所でお会いできて、なんだか胸が温かくなりました❤︎
ゲストルームは朝晩は少し冷え込むため、こたつが置かれているのも嬉しいポイント。
お部屋の奥には、畳4枚分ほどの寝室スペースがあり、そこに布団を敷いて休みます。
静かな山の空気のなかで、布団にくるまって眠る夜は、ちょっとした旅先の贅沢でした。
農家民宿ジュゲムで体験した、薪で炊いたご飯とタイ料理の夕食づくり
畑で収穫された新鮮な野菜を使って、夕食の準備が始まります。
旦那さまが玄関先で燻製を作ってくださり、こんがりと燻された鶏肉からはたまらない香ばしい香りが漂います。
その香りだけで、もうお腹がグーっと鳴りそう!これがまた良い匂いがするんだわ!
こちらは釜戸。
人生初のかまどご飯炊きに挑戦です。とはいえ、やり方は全然わからないので旦那さまにほぼお任せ状態(笑)。
薪の煙と共に、ご飯の炊ける香りがふわっと広がり、ますます食欲が刺激されます。

田舎ならではの虫の多さの話から、いつの間にかマムシ酒の話題に飛び火。
見た目がちょっと食欲をそそらないので、一旦退散して奥さまのお手伝いに移りました。
宿泊の際、通常の宿泊費にプラスしてタイ料理レッスンをお願いしました。
手に入る材料で工夫しながら、一緒に手を動かして作る時間は貴重な体験です。
まずは、ソムタムをポクポクしたあとは・・・。
海老すり身に、レッドカレーとこぶみかんの葉を混ぜ合わせると。
この香りだけで、もう異国の風を感じさせてくれました。
テフロン加工のフライパンは使わず、昔ながらの鍋を使うので、調理の様子からも安心感が伝わります。
素材そのものを大切にした、丁寧な料理法でした。
続いて、鶏肉と野菜を炒め、自家製ナンプラーと砂糖で味付け。
手軽ながらコクのある家庭の味に仕上がりました。
いよいよ夕飯の時間。ご夫婦と一緒に囲む贅沢な食卓

仕事以外は一人で食べることが多いので、今日はご夫婦と私たち、みんな揃っての夕食がとても嬉しかったです。
青パパイヤと人参のソムタム

畑で採れた人参は、スーパーのものとは比べものにならないシャキシャキの歯ごたえ。
しかし、青パパイヤはどうやって手に入れたのだろうか?
今頃になって疑問に感じた(笑)
海老の生春巻き

あっさりとした味わいで、毎日でも食べたくなる美味しさ。
ヘルシーで軽やか、旅の疲れも癒されます。
鶏肉と彩り野菜の炒め物

ミントがアクセントになった、優しい味付けの炒め物。
素材の味を生かしつつ、ふんわり香るミントが新鮮です。
海老のすり身揚げ

レッドカレーを混ぜ込んだスパイシーなすり身揚げ。
外はこんがり、中はぷりっとしていて、止まらない美味しさ。
ツルムラサキの炒め物

独特の歯触りが特徴のツルムラサキ。
都会ではなかなか食べられない貴重な野菜で、今年は畑で豊作だったそうです。
トムヤムクン

海老がゴロゴロとたっぷり入ったトムヤムクン。
さっぱりとした酸味とスパイシーさが絶妙で、体の芯から温まります。
鶏肉の燻製

旦那さまが作ってくださった燻製。
一口食べると、香ばしい香りが口いっぱいに広がり、まさに絶品です。
鹿肉ジャーキー

鹿肉の太ももの部位を使ったジャーキー。
通常は筋が多く料理に向かない部位とのことですが、食べてみると驚くほど柔らかく、お酒が欲しくなる味わいでした。
デザート|フェイジョア
デザートには、畑で採れたフェイジョアという果実が登場。
爽やかな甘みとほのかなアクがあり、洋梨に似た味わいでクセになる美味しさでした。
食後のひとときに感じた、暮らしの温もり

夕食をいただきながら、ご夫婦が色川での暮らしのことをたくさん話してくださいました。
畑仕事のこと、季節の移ろいと共にある生活のこと。
買わずとも足る暮らし――自給自足に近い地産地消の営みが、こんなにも豊かで丁寧な時間を育んでいるのだと、しみじみ感じました。
大切に育てられた野菜や、手間を惜しまず作られた燻製やジャーキー。
それらがテーブルに並ぶと、ただ「美味しい」だけでなく、心までじんわり温かくなるような味わいになります。
「ごちそうさまでした」
その一言に込めた感謝が、今夜はいつもより深く胸に響きました。
川の水を焚いて湯を沸かす夜。

お風呂は、薪で焚いた共同の湯でした。
最初は「シャワーだけで済ませようかな」と迷っていたのですが、夜の冷え込みに背中を押され、思いきって入浴することに。
湯船に浸かった瞬間、じんわりと体の芯まで温まっていく感覚。
あっという間に汗がにじんできて、「これが薪の力なんだな」と素肌で実感しました。
夜9時にはお布団に入り、
静かな山あいに響く川のせせらぎをBGMにしていたら、
いつの間にか、深い眠りについていました。
朝露とハーブの香り、JUGEMU畑さんぽ
翌朝は少し早起きして、民宿の裏にある畑を見学させていただきました。
朝の光に濡れた畑には、見たことのないハーブがたくさん育っていて、どれもとても元気。
唯一わかったのが、大きく茂ったレモングラスでした。香りも鮮烈で、さすが南国育ちのハーブという貫禄。
畑の一角には、お風呂や釜戸に使う薪の小山も。
ご主人に伺うと、木を伐ってから実際に薪として使えるようになるまでには、想像以上に長い時間がかかるのだとか。
切って、乾かして、割って、積んで――
そのどれもが人の手間と時間をかけて初めて「燃やせる薪」になるということ。
日々何気なく使っている火のありがたさを、じんわりと感じる朝でした。
南国の朝を、色川で。ジョークという名のやさしいタイのお粥
朝食は、黒米を使ったタイ式のお粥「ジョーク」でした。
ほんのり紫がかった優しい色合いに、体がゆっくり目覚めていくよう。
お粥には、自家栽培の薬味やクルワンプルーン(タイの調味セット)をトッピング。
デザートには秋の恵み・採れたての柿も添えられていました。
生姜の風味がふわっと香る熱々のジョークは、朝の冷えた体にじんわり沁みる美味しさ。
「朝ごはんって、こんなに幸せな時間だったっけ」と思えるような、そんな朝でした。
お金では買えない贅沢がある──心に刻まれた極上の時間

ご夫婦には、これ以上ないほど温かく迎えていただき、最高の時間を過ごすことができました。
お二人の暮らしの中に感じられる、人間としての尊厳と豊かさ。
それは、どんなお金でも買えない、かけがえのない贅沢そのものでした。
この貴重な体験と出会いに、心から感謝しています。
「ありがとうございました」
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